26だし生き方なんて上手くない

26歳になった。思い出すのは小学6年生のころクラスでプロフィール帳が大流行し、その"結婚するなら何歳?"という質問に23歳と書いたこと。12歳の私が本当になんとなく書いた年齢からさらに3年経ったいま、特に結婚する予定はない。というか先月フラれたし。同級生が結婚予想年齢を18歳や20歳と書くところを横目に、大学を出てからがいいから23歳と書いた当時の私はのんびりしていたというか、リアリストというか。そもそも空欄を全部埋めるために絞り出した年齢が23歳で、結婚…するかなぁしたいか?とか思っていた。結婚式で純白のウェディングドレスを着て幸せそうに微笑む自分を想像するのは居心地が悪く、将来の夢をお嫁さんと書くクラスメイトのことを「誰かのお嫁さんになったから、なに?」という気持ちで見ていたりもした。

25歳を振り返る。25歳が終わって悲しいのはBTSのAirplane pt.2「25歳、上手い生き方は未だにわからない(日本語版;25だし生き方なんて上手くない)」という歌詞をそっくりそのまま25歳の私が共感することはもう一生できなくなってしまったこと。人生のポイントで年齢どおりの曲を聞くのは私の癖みたいなもので、16歳の頃は東京カランコロンの16のbeat、17歳のころはBaseBallBearの17才、18歳の頃はGaliloGalileiの18を聞いていた。10代のころは通してフジファブリックのTEENAGERを聞き、22歳の頃はたまに思い出したように神聖かまってちゃんの22才の夏休みを聞いたりしていたが、23歳の頃BTSにハマりAirplane pt.2の歌詞を知ってからというもの25の部分を23、24と自分の年齢に置き換えて聞くようになった。私にとってBTSはメンターみたいなもので、一番年下のメンバー・ジョングクとは同い年&同じ月の生まれだからこそ若くしてトップスターに上り詰め、ありきたりな青春を犠牲に努力し良い人であろうと努める彼らの言葉は私の背中を押した。幸せだけでなく辛い気持ちや悲しみ、怒りも歌にしてしまう彼らは私を孤独から掬い上げてくれた。2年もの間、彼らの声は私を支え続けた。

時によくなって たまにダメになって

今日は誰になってる? キムナムジュンor RM?

25だし生き方なんて上手くない

だからひたすらにただGO

youtu.be

しかし25になったあたりでパタリと聞く頻度が減ってしまった。25歳は本当にたくさんやるべき事が生まれて今まで通りで居られなくなったのが大きいと思う。私は韓国語をほんの少ししか理解できないから彼らの歌は翻訳歌詞を読むか日本語版を聞かなければストレートに理解することができなくて、それをするだけの体力も精神力もなくなってしまったからだ。「25歳、上手い生き方は未だにわからない」と歌う当時25歳のRMと同い年になったというのに、私は彼よりもっとずっとちっぽけな気がした。彼のその賢さが大好きだったが、彼のような人物になれない情けなさもあった。25歳のRMが上手く生きていないのなら23歳、24歳の私は上手くなくて当然だと安心できたのに25歳になった途端本当に上手くいかないことが続いて大好きな歌詞をポジティブに受け止められない。現実が私に追いついてしまった。私はもう、彼らの歌をあまり聴かない。

そして、そうこうしている間に25歳は過ぎ去った。仕事を辞めたり、資格の勉強をしたり、転職活動を詰め込みすぎて体調を崩したり、16年一緒だった犬は骨になり、いい感じになった人との関係を破壊したり…。気分は塞ぐし疲れるし大変だったけれど、どれも初めて経験することばかりでいい経験になったと思う。あからさまな失恋は失恋ソングの重要性に気づかせてくれたし、友人たちは仕事の帰り道、残業後の深夜、恋人との旅行中であっても私が傷ついていると知ったら一も二もなく電話してくれた。世の中のわからないことが少しだけわかるようになって楽しめることが増えた。自分一人の頭と体でどこにでもいけるということも初めての国内一人旅で分かったし、知らない土地にいることと自室に篭って頭を唸らせていることは大して違わないことにも気づいた。私は孤独ではないし、繋がりのきっかけはそこらじゅうに転がっていて掴みに行けばいとも簡単に手に入る…。そんな簡単なことすら見えなくなっていた、というか初めから見ようとしていなかった。世界は思っているより楽しいらしい。苦しいことの渦中にいるときは日々をただ過ごすことすら真綿で首を絞められているかのようにうっすら息苦しい。でもそういう面だけじゃないのなら、これからの生活は楽しいものになると思う。予感がしてる。信じてる。祈っている。ワクワクする日々が26歳の私には訪れることを。

BTSは去年ソウルでコンサートを行った。私はコンサートに応募していないし映画館での同時上映か何かに応募することもなかったけど、ソウルの舞台で彼らはAirplane pt.2を披露した。25歳をとうに走り抜けたRMはあの歌詞を、何百万ものファンが見つめる中「29歳、上手い生き方は未だにわからない」と歌ったらしい。私は今日26歳になった。去年に引き続き、上手い生き方は未だにわからない。