なんにせよかわいい私

かわいいのだ、私は。

髪を数年ぶりに伸ばしてみたら驚くほどしっくり似合った。今までずっとショートヘア、なんならハンサムショートくらい短く刈り上げてそれを褒められてきたから私はショートヘアが似合うのだと思っていた。もちろんそれは何の間違いでもなくて、しかしその上ロングヘアまで似合ってしまう人間だったらしい。ただボブ〜ミディアムが強烈に似合わない。ショートヘアからロングにするには絶対に避けて通れない中途半端な髪の長さは叫び出したくなるほど私の顔に似合わず、いつもここで「やっぱダメだ!切ろう!」となるのだけど、どうしてもK-POPアイドルのようなスーパーロングに憧れてしまい切りたい気持ちをグッと我慢した。結果、最高の仕上がり。髪が長いほど似合うのでは?と鏡を見るたび思う。自意識過剰なナルシシズムだろうがそんなことはどうでもよくて、本当にめちゃくちゃ素敵なんです。私の髪は基本的に直毛なのだけど、コテでウェーブにするとこれまたひっくり返るくらい似合う。昔(と言っても二十歳の頃)の私は病んでいて陰鬱な雰囲気がロングヘアにより更に加速しているように見えて嫌いだったし、顔の周りを覆う長い髪が外と自分をカーテンのように隔てている気がして一刻も早く切りたかった。そんな印象のままだったからまさかこんなにも華やかで可愛らしい雰囲気すら出るとは思わず、毎日最高の気分です。元々年齢より上に見られてきた顔立ちや雰囲気がようやく本当の年齢に一致し出したようで、色気もあって素敵だなと我ながら惚れ惚れ。

ここまでずっと絶賛・自画自賛タイムだけどこの先もそうなのでついてこられる人だけついてきてください。私の顔立ちは特に美人でも可愛い感じでもなくどちらかというと目鼻立ちも小さく地味で素朴、言い換えれば上品な見た目。だから初対面で「綺麗ですね」と言われたことはない。けれど子どもの頃から今に至るまで「かわいい」と言う言葉には馴染みがある。それが見た目を指すのか言動や行動を指すのかは知らないけれど、後者だとして他人に「かわいい」と思わせられるんだからかわいいもんはかわいいんである。子どもの頃はやたら人形のポポちゃんに似ていて通りすがる婆さま方によくおひねりをいただいたし、小中高とかわいいと友人に言われたり、好意的な男性にかわいいと言ってもらえたり、大人になってからも同性の方にもそう言ってもらえる機会がありその度に良い気分、鼻高々、意気揚々、嬉しくて帰り道人目も憚らずにやにや帰宅する。

子どもの頃、鏡を見た私がまじめに「わたしってすごく可愛いよね」と言うもんだから母は爆笑した。ちょっとかわいいとおだてて育てすぎたかもしれない、と。たしかに客観的に見ればアイドルはおろかクラスのかわいい子にすら選ばれない程度の容姿である。それでもやっぱりかわいい、かわいいね。いくつになっても素敵だね。だからみんな私をニコニコ見つめるし、好きでいてくれる。面と向かって「かわいいね」と照れくさく言ってくれたあの人はもうこの先の人生に再登場しないけど、私が今日鏡を見て「かわいいね」と呟く言葉の源となってくれている。